「お亡くなりで凍結された本人の銀行口座は、
そのままでは預金を引き出せないが、
不動産については、亡くなった本人名義の
ままにしていても住み続けることができる。
つまり、相続登記は不必要ではないか?」
相続登記は当事務所のような専門職に任せると、
報酬だけでも数万円は掛かります。
専門職に任せずご自身で手続を進めようにも、
「遺産分割協議書」や「登記申請書」などの
複雑な書類を自ら作成しなければなりません。
相続登記をしないで済ませたいお気持ちも、
本当によく分かります。
しかし、相続登記をしないで放置することは、
リスクが大きいので基本的にお勧めしません。
そのリスクとは、大きく分けて2つあります。
①まず、将来、相続登記をしようにも、
時間が経てば経つほど登記が困難になります。
相続登記では、相続人が複数いる場合、
誰かを単独の所有者としたければ、
法定相続人全員の実印による捺印のある
「遺産分割協議書」が基本的に必要です。
時間の経過により、従前の法定相続人のうちの
誰かが亡くなると、さらに相続関係が生じ、
実印による捺印が必要な相続人が
そこで新たに生じることになります。
相続関係が複雑になるだけでなく、
関係の遠い相続人が生じることになり、
捺印を頼むことが事実上困難になってきます。
不動産を売却する場合、
売却の前提として相続登記が不可欠ですが、
放っておくと、相続登記が事実上困難なために
不動産を売却できない事態も生じかねません。
②次に、知らないうちに法定相続登記がなされ、
登記された一部の相続人の共有持分が
担保にされたり差押えられたりする事態が、
将来、全く起こり得ないとは限りません。
法定相続分のとおりに相続登記をする場合、
「遺産分割協議書」が無いまま
相続人の誰か1人だけによる申請でも、
相続登記は可能です。
よって、他の相続人が知らないうちに、
相続人のうちの誰かが借金をして、
その不動産の自らの共有持分を担保に入れる
ということも、法的には可能です。
さらに、相続人が自ら登記申請しないで
相続登記がなされる場合もあります。
相続人の誰かが大きな負債を負っていて、
これを返済しきれないような場合、
債権者が相続登記を代わりに申請して
債務者の共有持分を差押えることも
現実にはあり得ます。
当然、担保や差押の対象とされた不動産は、
そのまま普通に売却することは不可能です。
競売で立退きを迫られる危険さえあります。
よって、相続財産に不動産がある場合、
相続登記は早めに済ませておく方が無難です。
なお、現在、相続登記は義務化されています。
令和6年4月以降、原則として、不動産を
相続したことを知った日から3年以内に
相続登記を申請しなければなりません。
詳しくは法務省のHPをご覧ください。