「同居の母が認知症に罹っていますが、
成年後見を申立てなければなりませんか?」
「母名義の口座は、現在、私が管理していて、
このまま成年後見人がいなくても、
私達の生活に何も差障りはありません。」
現行では、認知症に罹った方のご親族に対し
成年後見の申立てを義務付ける法令はありません。
よって、冒頭のご質問に対するお答えとしては、
「成年後見を申立てる義務はありません。」です。
少なくとも普通預金口座の預入と払戻に関しては、
私の知る限り、国内の金融機関の多くは、
同居のご親族による管理を事実上黙認しています。
よって、成年後見人がいないままでも、
事実上ご本人の生活に支障が無いケースも多いので、
あえて成年後見を利用しないご親族も少なくありません。
ただ、私としては、冒頭の質問に対しては、
「それでも成年後見を申立てることをお勧めします。」
とお答えするようにしています。
そのお答えの理由としては、確かに、
「ご親族であっても財産管理権は当然には認められない」
という法的な問題も有りますが、
それよりも、もっと現実的な問題が有ります。
「他のご親族もこのままで良いとお考えでしょうか?」
この先、ご本人がお亡くなりになると、
ご本人の相続が開始することになります。
遺産分割の話合いの場になって、
同居のご親族によるご本人生前の財産管理状況を
他のご親族から問題視されるケースが多発しています。
(「不当な使込みで遺産が減らされた!」等)
今現在、他のご親族から何も言われていないとしても、
ご本人のお亡くなりの後も同じであるとは限りません。
遺産分割の話合いの場で、堂々と、
「私は、家庭裁判所に選任された成年後見人として
裁判所の監督を受けて財産を管理していました。
よって、私には何もやましいところはありません。」
と説明できれば、使込みを疑われにくくなるはずです。
成年後見は、本来、ご本人のための制度ですが、
「ご親族間の将来における相続争いを防ぐ」という
現実的な効果が有ると、私は考えています。