「自分が亡くなったら、同居している長男に
遺産を全て相続させたい。別居の二男には、
全く相続させたくない。生きている間に
二男に事前の相続放棄をさせておきたい。」
このようなご相談を受けることもありますが、
「事前の」相続放棄は認められません。
当人のお亡くなりの事実が現に発生して
初めてその相続人による相続放棄が可能です。
また、冒頭のご相談のケースでご説明すると、
予め二男に相続放棄の念書を作成させておいた
としても、念書には法的な効力はありません。
冒頭のご相談のケースでは、まず、
「長男に全て相続させる」旨の「遺言書」を
作成しておくことをお勧めします。
そうした遺言書があれば、お亡くなりの後、
長男は、仮に二男の同意が得られなくても、
全ての遺産を相続することが法的に可能です。
(相続による不動産の名義変更も可能です。)
こうした遺言書を作成しておくだけでも、
お望みの結果になる可能性は高まります。
もっとも、遺言書を作成しておくだけなら、
二男が長男による相続を不満に感じた場合、
二男が「遺留分減殺請求」を主張すれば
遺留分(このケースでは法定相続分の半分)
が侵害されている限度で、長男による相続を
法的に争うことも可能です。
「長男が確実に相続する方法は無いですか?」
そのための方法も無いわけではありません。
このご相談のケースでご説明すると、
①「長男に全て相続させる」遺言書を作成し、
②二男が遺留分を事前に放棄しておけば、
長男が全ての遺産を相続しても、
二男は遺留分減殺請求ができなくなります。
(長男による相続を法的に争えません。)
ただし、事前の遺留分放棄は、裁判所の許可を
得ておかない限り、法的な効力はありません。